第47章 空白の時間
カカシは目を閉じ、「はぁ~」とまた長い溜息をひとつ零した。
そして今度はダメだこりゃというようなジトっとした目でさきを見て、布団から片手を出し、こちらへ来るようちょいちょいと手を招いた。
さきはその手の動きに素直に従い、自分の布団の中で、もぞもぞとカカシの方へ少しだけ身を寄せた。
「お前はさー…そうやっていつもオレのためにって言うけど、オレはお前を心配してるの、分かるでしょ。」
『それは分かってるよ…でも私も同じように心配してる。 カカシがそれを嫌がるなら、これは私のためにすることやから…「こういう時にそうやって聞き分けのないとこ、どうにかなんないの?」
カカシはさきの言葉に躊躇なく声を重ねた。
先程まで手招きしていたカカシの大きな手は、少しだけこちらへ伸ばされていた。
その長細い指はさきの髪を一束摘まみ、軽く毛先の方へ向かって梳いてゆく。
そのこそばゆい感覚に、さきは思わず目を細めた。
「前から思ってたけど、お前の髪って細くて猫っ毛だよね。 オレと違ってふわふわ。」
『…あの…仕事中なんですけど……』
さきの真面目な返しに、カカシは、フッと目を細めて笑う。
髪を梳いていたその手を止めたかと思えば、今度はポンと小さな頭に手を乗せていつもの様にひと撫でした。
「その修行をする気ならオレがいる時にしてくれ。 それならいいよ。」
カカシの手は暖かく、重たかった。
甘くて低い声と彼の優しさが、さきのだるくて痛む身体に心地よく響いてゆく。
『分かった……』
すると納得したようにカカシは微笑み、ポンポンと彼女の頭を何度か撫でた。
その心地良さと、話し疲れからか、さきを徐々に睡魔が襲う。
「やっと眠くなった?」
『…うん…』
「おやすみ。 ゆっくり休め。」
私が眠るまでその大きな手が、自分の頭の上にあったのを何となく覚えている。
カカシに髪や頭を撫でられるのは、とても好きだ。
―――――――― とても、落ち着く…