第43章 適材適所
人の心とはよく出来ているもので、不安要素をひとつ持ち出すと、更にそこから湧き出るように不安や恐怖が増えていく。
それは彼女とて同じだった。
(こんな…私に……)
「さき…」
さきの頭の上から、低く優しいカカシの声が落ちてくる。
さきは震える両手を重ね、胸の前でぎゅっと握りしめた。
どう返事すれば良いのか分からなかった。
任せてください?
やらせてください?
それとも断るの?
さきは火影様からゆっくりと目を逸らして、その声の主を不安の表情で見上げる。
(…どうしてそんなに笑顔なの?)
彼女の瞳は僅かに揺らいだ。
「お前はオレの自慢だ。 自信を持て。」
…でも、私はまだ弱い。
「俺が保証する。」
『カカシ……』
「大丈夫。 オレを信じろ。」
その言葉に、さきは瞠目する。
そう言えば、自分の心が追い込まれる時…辛い時や、不安な時や、私を送り出す時はいつもカカシが決まって言ってくれた。
“ 大丈夫 ”
そう言ってくれた時は本当に大丈夫だった、とさきは不意に思い出す。
傍から回答を待ち、見守っていた火影様がゆっくりと口を開いた。
「さきよ。 ワシはな、適材適所その者にあった役割を与えてやることにはいつも頭を悩ませる。 だからこそカカシを呼んだのじゃ。
ワシだけではない、カカシも、お主を信じておるのだ。 お主もそれを信じてみてはどうだ?」
さきの大きな瞳がカカシから、火影様へと向けられる。
先程と変わらない火影様の真剣な眼差し。
その口元には少しの笑みが浮かんでいた。
決意が固まった。
『ありがとうございます火影様。
…特別上忍として、頑張らせてください』
「うむ。頼んだぞ。」
さきは火影様の手から、カカシと同じベストジャケットを受け取った。