第3章 Talking Night
『ん……うー…ん……』
あ、起きたかな?
カカシは普段なら聞こえるはずもない女性の声に、動かしていた手を止めた。
昨日ひょんなことで出会った彼女は今、カカシのベッドの上にいる。
少し話した後、すぅっと溶けるように眠ったのだ。
少しずつ寝息が深くなり、簡単には起きないであろう頃合を見計らって、カカシは床に転がって眠るさきを、ベッドへ運んだのだ。
彼女がいくら床で寝たいとはいえ、仮にも護衛任務の対象者に、風邪など引かれて体調を崩させる訳には行かないし、何より年頃の女性だ。
いくら夏だからと言っても身体を冷やすのは宜しくないと判断した。
時刻は朝の六時半。
カカシはさきが起きるよりも先にシャワーを浴び直し、朝食の準備を進めていた。
彼女は、コーヒーは好きだろうか。
なかなか招かない来客用のカップを取り出して考える。
甘いものが苦手なカカシは、コクの深い苦めのドリップコーヒーを一足先に抽出した。
先程の声の後、モゾ…と動く女性の身体。
起きてこないな…と視線をそちらにやった時、キッチンから見えてしまったその姿に、カカシは焦りを隠せなかった。