第40章 私は貴方で、お前はオレで。
その様子に、今度はさきが困惑する。
『え……そうやろ? じゃ、なんでカカシが嬉しいと私も嬉しくて、カカシが辛いと私も辛くなるんよ?』
『カカシはたまーに意味わからんこと言うな~』と続けながら、さきはカカシの脇腹にふんわり軽い拳をトンっと入れ、少々鼻息荒く叱った。
『とにかく深く考えすぎっ。 別に私はカカシに、私のために何かして欲しいわけじゃない。 カカシは自分のために自分らしく居ればいい。 私はそんなカカシで出来てるんやから。
カカシが遅くまで頑張ってる時は、私も負けんように張り切って修行したいし、力になりたい。 カカシが早く帰る時は、私も早く帰りたい。 カカシが強いから、私は強くなりたい。
全部カカシありきってこと…それくらい当然分かってて欲しいんやけど』
何で分かるんだ?オレの考えていたことが。
カカシはさきの顔を見つめ、ほんの少し考える。
(……あぁ、“お前はオレ”だからか。)
カカシの表情が、ほんの少しずつ和らいでゆく。
「お前よく恥ずかしくないね~ そんなことこんな道端で。」
彼女がこんなことを言うことなんて今まで無かったのに。
『え、アカンの? せっかく五日ぶりに会えたのに』
「いやいいけど…どうしたの? ……もしかして、オレの事好きにでもなってもらえた?」
カカシはいつものようにさきを少しだけ揶揄って、いつものように笑ったつもりだった。
『ん~…… それはどうかなっ』
そう言って微笑み、また歩みを進めるさき。
カカシは驚いて何度か瞬きをした。
さきが慌てたり、否定しなかったのは初めてだった。
(オレの中で何か変わってきているように、お前の中でも何かが変わってきているのか?)
オレがお前で、お前がオレであるように…
「ふっ...何なのそれ」
(そうだととても嬉しいんだけどね。)
カカシはフッと笑って、さきの後ろ姿を眺めながら歩いた。
さきが『早く』と手を差し伸べてきたその時まで。