第2章 Crying Night
「風邪ひくよ?髪もまだ少し濡れてたし」
『夏は半乾きでも自然と乾くんですっ。 カカシ…そんな様子じゃ女の子たちみんな勘違いするやろ? …遊び人やと思われるよ?』
「遊び人ねぇ…」
そういいつつ何故かさきの隣で片肘をついて頭をその上に乗せ、身体を横に倒して同じように寝転がり、「そういえば誰々がなんとか言ってた」だとか、「あの時のあれはどうだっただ」のブツブツ低い声で1人で話し始めた。
この声、低くて甘くて、眠くなる…
体が床から離れない気がしてきた。
「…ま、オレのことはどうでもいいから、とりあえず寝ちゃいなよ。 眠そう。 目、とろんとしてるよ?」
先程泣いたこともあって、もう既に瞼がじんわりと重い。
床の冷たさが布で覆われてない肌を通して伝わってくるのが心地よい。
窓の外からの風は少し生暖かく、それでもとても涼しかった。
『ん…おやす…』
さきの意識は、真夏の夜の空気に溶け込むように無くなり、今日初めて会った男の部屋中に広がって、窓の外へと吹き抜けて行った。