第39章 CRISIS
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日が昇りはじめ、他の忍達が動き始めようとする頃、さき達はスタート地点から約十キロ…いやここに辿り着くまでの経路を考えると間違いなくそれ以上はあったのだが、なんとかその距離を走り、無事ゴール周辺に来ることが出来た。
ここまでの道中、幸い他の忍に遭うことはなかったが、夜行性の獣やこの森特有の不気味な生き物に対応するので思ったよりも時間がかかってしまった。
そして目指すそこは、ほとんど目と鼻の先にあった。
『待って…ここからは奇襲に会う可能性が高い』
「え?…ここまで無事にこれたのに、そうなの…?」
『待ち伏せしてる人が必ずいるはず。 この試験を効率よくクリアしたいなら、ゴール周辺に潜むのが一番やからね…』
「確かにさきさんの言う通りだ…どうします?」
さて、どうやって上手く切り抜けよう…とさきが考えようとした時、
「でも! 目的地はもうすぐそこですよ! 行きましょう!!」
アイリが突然、人の話を最後まで聞かずに、ずんずんと先に進んでいってしまった。
「あ!ちょっと!」
一人にさせてしまうとかなりまずい。
『追いかけようカブトさん!』
さきとカブトは急いでアイリの後を追いかけた。
しかし、アイリの動きはかなり速い。
本人が自信を持っていたのも頷ける。
これではチームワークじゃなくて、完全に独走状態だ。
カブトが必死にそれを止めようと更にスピードを上げた。
その後を追うさき。
(まずいな…こういう場所はゆっくり慎重に進むのがセオリーでしょ…このまま敵が襲ってきたら…)
その時、一心不乱に駆け抜けるアイリの斜め後方に、キラリと怪しく光る何かがさきの視界に映った。
黒く輝くそれはクナイだ…と認識した瞬間、それが勢いよく投げ込まれた。
『危ないアイリ!!!』