第36章 手合わせ
教え子たちと別れた後、カカシとさきは肩を並べて夕暮れの自宅までの道をゆっくりと歩いていた。
「今日の感じなら中忍試験も、特に問題なさそうだな」
『そんなことないよ。 全然足りんくらい』
「……お前は何でそんなに頑張るの?」
カカシはふと疑問に思ったことを口にした。
一方のさきは、少しの間カカシを見てキョトンとした顔をして、次にはにかみ笑いを浮かべた。
『え、そういうの言わしちゃう? …カカシのこと護りたいからよ。 カカシは強いから、私も強くなりたい。 それだけっ』
「……なるほどね」
何が“なるほど”なのか分からないまま、自分の中にある、少しモヤモヤとした感情を抱えて、カカシはその目で弧を描き、緩く微笑んだ。
さきはその笑顔の裏で、カカシが “何か” 考えてるな…と感じ取っていた。
もうすぐ、今年の第一回目の中忍選抜試験が始まる。
二人を照らす沈みかけの夕陽は、その影を長く引き伸ばしている。
くっきりと黒く塗り分けられたその二つの影は、時々重なり合いながら、その光と影の境界が薄まってくるまで、ゆっくりと同じ速度で歩き進んだ。