第30章 初対面
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「…にしても…あのタイミングで銀冠菊を見せてくれるなんて、お前もなかなかな演出家だね」
三人の姿が見えなくなったところで、ふっと優しく笑うカカシ。
さきが打ち上げたあの彩火の意図を彼なりに読み取ったのだろう。
『だって…嬉しくて、つい。』
「難しい術なんでしょ?」
『結構ね。 でも、そういう所も含めてカカシにピッタリやろ?』
「ふっ…お前はホントに飾らないね。
“…ありがとうさき。 …―――… ”」
目を優しい三日月のように形を変えてにっこりと微笑み、さきにその言葉を向けるカカシと、それを見ている彼女の間に、ふとさきにとって“懐かしい”、柔らかで暖かい“風”が流れた。
それはもう何年も前に感じたことのある“風”。
…そういえば、“あの時”も春だった。
どうして今、それを思い出すのかは分からなかったけど…目の前にいる人は全く別の人だけれど…私は、今のこの“風”を知ってる。
この感情を知ってる。
さきの胸の奥が、ズキリと強く傷んだ。
―――――――――― …
<ありがとうさき。愛してる>
<私も健太を愛してるよ>
…――――――――――
今、さきの目の前で優しく微笑むカカシ。
「…ありがとうさき。愛してるよ。」
………あぁ……… あの時の“風”と同じだ…。