第1章 真夏の旅人
ご飯、お味噌汁、サラダ、お魚の煮物、おひたし、お漬物。
テーブルに並べられた料理はなんとも健康的なメニューで、それも凄いのだが、カカシの慣れた料理の手つきとスピードに、思わず女である事を恥ずかしく思うほどにさきは驚いた。
さきが作ったのは、お味噌汁だけ…あとお漬物を切ったくらいだ。
「さ、食べようかさき」
『カカシすごいね…毎日こんな食事してるの?』
「まさか。 普段は仕込んでおいたものを温めて食べるくらいだよ。 何せ独り身だからね」
カカシは苦笑いしながら答える。
ほんま、世の中おかしいよね…とさきは思った。
こんな(料理、お掃除などの家事において)高スペックな男が売れ残ってるなんて。
25なんて、遊び盛りでしょ。
彼女の一人二人いても何もおかしくない。
しかし、部屋のどこを見ても、男物しかないカカシの部屋。 奥の机の上など仕事道具ばかりだ。
もう何年も彼女なんていないということが一目でわかる。
『……もしや性格に難アリ?』
「ん?」
『なんもない!…食べよう!美味しそ~っ』
「あぁ。誰かと食べるのは久しぶりだな。」
『ごめんね、そんな相手が私なんかで。』
「ホントにね。」
『なによー。』
「ジョーダンだよ、ほら。いただきます。」
共に食べた初めての食事。
カカシが作った料理は、全て料亭のように味が完璧で、とても美味しかった。
私の作ったお味噌汁は、ほんの少し、薄味だった。
あれ?カカシ…さすがに食事の時はマスクを外すんじゃ…?
そう思ってぱっとカカシの顔を見た時には、毎回決まってマスクの中で口をモグモグ動かしていた。
これは、徹底的にみせないようにしてるんだな。
そう悟ったさきは、いつか見てやろう、と密かな目標を見つけたのだった。