第29章 Silver Fireworks
巳・午・卯―――――……虎。
『火遁 彩火(ハナビ) 銀冠菊(ギンカムロギク) 』
さきは、黒い彩火玉をカカシ達の上空へ向かって高く放った。
さきの術は援護向きの長距離型の攻撃技が多い。
その中でもこの技は特別その威力が高く、長く、またとても美しい。
銀冠は、錦冠というとても豪華な花火の一種で、最もチャクラを練り込まなければならない“カカシと同じ”白銀色の彩火。
そして銀は、花火の色の中でも、最も高い温度でゆっくり燃焼させてやっと出る難しい色。
(だからカカシも、ゆっくりね......)
さきは願いを込めて、グッと印を結んだ手に力を込める。
こんな昼間の明るい空でも、美しくその色が四人に見えるようにと、さきはとびきり火力を上げた。
『ま、それなりに難しいんやけどね、この技…』
花弁が垂れ下がる様な息の長い火の花が、ドンドンと大きな音を立てて次々に咲いた。
「なに?花火?! こんな昼間なのに綺麗…」
「すっげーってばよ!花火大会みたいだ!」
「……フン」
「……あいつ」
さきのいる森の方を振り返ったカカシ。
その顔はとても優しい笑顔で、「おいで」とさきに向かって緩やかに手を招いた。
さきは、いいのかな…と戸惑いながらも、木陰から日の当たる場所へと足を踏み出した。
まるでカカシと共に、カカシの大切な人たちがそちらへ呼んでくれているかのように、木陰を抜けたその先はとても明るかった。