第26章 鈴取り演習 -1-
翌日午前10時。場所は第三演習場。
健気に自分を待っていた三人にカカシは普通に挨拶をした。
「やーーー諸君おはよう!」
「「おっそーい!!!」」
ナルトとサクラに叫ばれるのも無理はない。
指定した時間はとうの昔に過ぎているのだから。
カカシは“適当に”黒猫の話をしてその場を凌いだ。
カカシは、さきには一度ちゃんと見てもらいたい…と思っていた。
この試験のやり方と、彼らの動きを。
だからわざわざ彼女の任務が終わるまで待ち、彼女を連れてここに来た。
今さきは少し離れた木の陰に気配を隠し、身を潜めている。
(さて…)
「よし! 12時セットOK!
ここに鈴が2つある…これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ。」
カカシは赤い紐の着いた鈴を2つポケットから取り出し、鳴らして見せる。
「もし昼までにオレから鈴を奪えなかった奴は昼飯抜き! あの丸太に縛りつけた上に目の前でオレが弁当食うから。」
下忍なりたてのこの三人はとても素直な子供だ。
腹の虫を鳴らす者もいて、昨日のカカシの言いつけ通りちゃんと朝食を抜いてきているのが見てわかる。
「鈴は一人1つでいい。 2つしかないから…必然的に一人丸太行きになる。 鈴を取れない奴は任務失敗ってことで“失格”だ! つまりこの中で一人は学校に戻ってもらう…」
カカシは淡々とこの演習のルールを説明してゆく。
このように言うと、殆どの者は自分が受かる為に燃えてくるのだ。
わざとそうさせ、仲間割れを誘う…そんなカカシの考えに気付いた者は、今まで誰一人としていなかった。
(頼むぞお前達、気づいてくれよ…?)
「手裏剣も使っていいぞ。 オレを殺すつもりで来ないと取れないからな。」
「でも! 危ないわよ先生!」
「そうそう! 黒板消しもよけれねーほどドンくせーのに、本当に殺しちまうってばよ!」
ここでカカシは、少しこの演習と自分を甘く見ている“ガキ”を挑発した。
別に怒っている訳では無いのだが、こうでもして本気にさせないと、この演習の意味がないからだ。