第25章 自己紹介は「愛してる」
『もうっ! ねえ!カカシ!』
すぐ近くに身を潜めていたさきはカカシの後ろから姿を現す。
つかつかと詰め寄って、『さっきのアレ別に子供たちの前で言わなくても!』と無意識に顔を赤くして怒った。
何なら先程の自己紹介はカカシのことでなく、自分のことをされているようなものではないか。
「ハハ お前途中から気配だだ漏れ。 動揺し過ぎ…クク」
『だってあんな…!』
突然の“愛してる”発言は、さきにとっては突然部屋の中に手榴弾を投げ込まれたかのような、衝撃的な爆弾発言だったのだ。
“愛してる”なんて言葉は今までカカシに言われた事はなかった。
好きとかなんかより、とにかく恥ずかしいし、照れる。
そして…何より困ってしまう。
「本当のことを言っただけだけど?」
『~~っだから!…もー…馬鹿…』
「困る事ないよ。 深く考えず、そのまま言葉通り受け取ってくれたらそれでいい。 でしょ?」
『…そうかもやけど』
「まだ何か? アイツらが知ってるのはオレの名前と、オレには愛している女性がいるということ…。 愛してるよさき」
『…私も黒板消しぶち落とすよ? ホンマにもう…』
さきの頭の上には暖かいカカシの手。
ニコニコしながら真っ直ぐに伝えられるカカシの自分への気持ちがとても嬉しい。
でもそれでまた照れて、気持ちが惑わされて分からなくなって、お礼や同意ではなく、可愛くないことを言ってしまうのだ。
チクリ…と少し痛む胸の奥。
それを隠すようにさきは話を元に戻した。
『…みんな、個性的で面白い子達やったね? ねぇ明日の演習、邪魔しないから時間が合えば見に行ってもいい?』
「あぁ来るといいよ。 第三演習場だ。」
(第三演習場か…明日は早朝に任務があって、行けるとすれば午前10時かな。)
『……演習は何時から?』
「……何時から来れる?」
またタイミングよく被る二人の声。
『…え? 私が時間あるのは……』