第15章 THE DAY -3-
辺りはもう真っ暗で、所々で街灯が点々と灯り、地面に積もった白い雪を照らしていた。
「滑るなよ?」
『うん、大丈夫。』
既に雪は止んでいたが、人々に踏み締められた道はテラテラと輝き凍っていた。
さきは行き先を知るはずもなく、今も尚カカシが何処へ向かっているのかは分からなかったが、カカシはそんなさきに終始気を配り、丁寧にエスコートしていた。
(優しいなぁほんまに。 ...誰にでも優しいんかな。)
気が利く彼のことだから、きっとそうに違いない。
さきは、ふとそんなことを考え、先日アンコに言われた言葉を何故か思い出していた。
<...カカシに彼女が出来てもいいわけ?...>
(...あぁもう 何でそんなことを今思い出すの?)
さきはふるふると頭を振って無かったことにしようとする。
と、その時。
ズルッ と凍った雪に靴が豪快に擦れる音が響いた。
『うぉぁっ?!?!』
足元へ向けていた意識が散漫し、余所事を考えていたのが仇となり、カカシに言われた傍から足を滑らせる。
ちゃんと見ていたカカシがそれを片手で難なく阻止し、さきは幸い転けることはなかった。
「鈍臭いね~言わんこっちゃない。 それに相変わらず可愛くない声だね...」
『ご、ごめん』
(かっこわる。 もう変なこと考えないどこ。)
カカシの左手は、咄嗟に掴んださきの腕を離し、彼女の右手をギュッと握りなおした。
「ほら行くよ」と軽く手を引いて。