第13章 THE DAY -1-
『はい、今日のお弁当。』
さきは今日もサスケにお弁当を渡す。
「あぁ。」
『今日で最後のお弁当やから、サスケくんの好きな物、いっぱい入れておいたよ』
「...食の好みの話をした覚えはない」
『ふふ...一週間も一緒にいれば大体分かるもんよ。 あ、そうそう今日は一段と冷えるって。 雪降ってるから傘も持ってってね。』
サスケの首元には、さきがプレゼントした紫のマフラーが巻かれている。
さきはこの一週間で、少しだけ二人の距離が縮まったような気がしていた。
そして、彼の事を少しだけ理解してあげられたような気も。
サスケにとって、家族がどんなものだったのか...
また彼の兄が、彼にとってどれだけ特別な存在であったのか......
サスケ自身の口から話されることは殆ど無かったが、家の中にある写真や一見何ともない小物などがそれを明確に示していた。
そこから見て取れる、彼への愛情の数々...
彼が失ったもの...彼の孤独......
それらを知ったところで、自分は本当の家族ではないし、なることも出来なければなろうとも思わないが、でもこの一週間共に過ごしたサスケのことを、もう只の他人として見ることは出来なかった。
言われた通り、傘を手に扉を開けようとするサスケを呼び止めるさき。
サスケはこちらを振り返り、いつもの様に“無言で”「なんだ」と言った。
『サスケくん、今日は私、キミの帰りを待っててあげられんのよ。 ごめんね。』
「別に何も問題ない。」
『寂しいでしょ?』
「バカかお前は」
『ふふふっ 私はちょっと寂しいよ』
「...そうかよ」
キミがその孤独に飲まれないよう、もっと早くに出会っていたらよかったのに...と、何度か思ったものだ。
復讐を考えずに済む道を与えてあげれたかもしれないのに、と。
これから先この子は、沢山の出会いの中で大切なものを知り、大切な仲間を作り、生きていくのだろう。
そしてその中で、藻掻き、苦しみ、深い闇の中へ足を踏み入れようとしていく彼を止めてくれる人が現れることを信じたいとも思った。
(私がその一人だと良いのに...)