第12章 欲しくないもの
(姉が居たら、こんな風だったのだろうか。)
サスケはこの数日、そんなことを考えるようになっていた。
面倒見がよく、口煩いが修行にも付き合ってくれて......ここに兄さんも居たら、一体どんな......と想像するほどに。
しかし、それを想像すればするほど、暗く冷たい現実が突きつけられるだけで、こんな想像は無意味だとも実感していた。
(そんな世界は“幻想”だ。 甘い事を考えてしまう自分が腹立たしい...)
だが、そんなサスケの複雑な感情を他所に、さきは家に毎日通い続けていた。
今朝もサスケが目覚めた時、彼の部屋には既にあの少し薄味の味噌汁の香りが漂ってきていた。
サスケはそれが、本当は少しだけ楽しみになっていた。
でも、それは今朝の話である。
サスケは今、ニヤニヤしながら自分の後ろをついてくる一回り以上も歳上のさきから、あからさまに不機嫌な顔をして逃げていた。
「ついてくるな。」
『なんでよ冷たい。 ね、それ似合ってるよ』