第1章 嫌われてない理由【冨岡義勇】
蝶屋敷から走り去って5時間,我に帰らず後先も考えず見知らぬ人里に来てしまった。知らない風景だ。・・息が苦しい。義勇さんにあんなこと言って,嫌われたよね?私。もう嫌だ。最悪だ。
「あらっ,慧音ちゃん?どうしたの?」
『蜜璃さん・・!うわぁぁ!!蜜璃さん!私・・。私・・』
私は,蜜璃さんに全てを話した。すると蜜璃さんは,
「冨岡さんは,慧音ちゃんが好きで緊張して話せないんじゃない?」
『だったら,いい話ですけどね・・。』
「慧音ちゃん!桜餅あげるから,元気出して!」
『いいんですか?』
「いいのよ!ごめんなさい,私も忙しいから!バイバイ!」
蜜璃さんも,引いたよね。こんなぐしゃぐしゃの顔になって,走って。叫びながら走って。蜜璃さんだって,柱だ。警備する担当地区が多い。急がしいのに迷惑かけた。ごめんなさい・・。
『家に帰ろう・・』
私は独り言を言って,また歩いた。私は,もう継子じゃないから義勇さんに会わなくてもいい。もう会わなくてー。
『義勇さん・・。』
義勇さんに会いたい。
「慧音!!どこだ!慧音ー!!」
一方,冨岡は必死に慧音を探していた。寝る間も惜しず,探していた。
「胡蝶!!そっちはいるか!?」
「こっちには,気配がありません・・。冨岡さん。後は,隠に任せませんか?私達柱は,明日も明後日も毎日のように任務があります。」
「駄目だ・・。俺が,今ここで見つけ出す!」
「冨岡さん・・。」
「頼む!胡蝶も手伝ってくれ!お願いだ!」
冨岡は,土下座してしのぶに頼む。
「(こんな彼を,初めてみた。こんな必死になって・・。それこそ,慧音さんのことがよっぽど大切なのですね。)
冨岡さん,顔をあげて下さい。私も,お手伝いしましょう。」
「ありがとう・・。胡蝶。」
そして今,月明かりに照らされて2人の影が,蝶のように飛び立った。