第5章 波乱の揺れ
育ちが良すぎで落ちた食べ物なんて食べたことがないから、本当に3秒ルールはそういうものだと思っているのかもしれない。違うと言ったらローの家の3秒ルールを否定することになってしまうのだろうか?
抗議できずにいると笑われてしまった。
「は可愛いな」
またおでこにキスされる。許可が出たから(出てない)、おでこはもうフリーパスだと思っているフシがある。
「あっち行ってて!」
いつまでも用を済ませられないので、はローをリビングの方へぐいぐい押した。
「暗くて狭いとこ怖くないか? 手握ってようか」
楽しそうに言われてさすがに腹が立ってきた。
「そういうプレイはしません!」
真っ赤になって断ったら意外そうな顔をされた。
「プレイとか知ってるのか。エッチだな」
「もうあっち行ってて!」
怒ってはローをリビングに押し込んだ。暗くてせまいトイレは確かに怖いかもしれないと思ったが、ローから逃げられるし、鍵もかかるし、むしろ出たくないくらい快適だった。
落ち着くのでしばらくはトイレに籠城したが、ローが「お腹痛いのか? 大丈夫?」と聞きに来て、籠もっていられなくなった。
仕方なくトイレを出ると心配そうな顔をしたローがいて、額に触れて「熱はないな」とを気遣う。
(船長さんにキスされないように、お腹痛いことにしとこう……)
実際元気ハツラツではないので大人しくしていると、彼は本当に心配し始めた。
「ラーメンのせいかな。クレーム入れるか」
「だ、だめ」
ラーメン屋さんは悪くない。しかし仮病というわけでもなく、お腹のあたりがキリキリする。