第3章 地獄の合コン
泣きながら突然告白したビビに、店中が静まり返っていた。
ローは苦虫を噛み潰したような顔で乱暴に席を立つと、上着をつかんで足早に店を出た。
「待って……っ」
追いかけてこようとするビビを振り切り、足早に駅に向かって来た電車に飛び乗った。
(なんでこうなる……)
いい雰囲気だったのに、完全に台無しになってしまった。シャチに悪いことをしたなとか、ペンギンもベポもいい雰囲気だったのに、と思うとため息をこらえきれない。
(普通に喋ってただろ……)
ビビはローのことも知らず、完全に初対面だった。それがなんでいきなり泣きながらの告白になる? 理解不能でローはぐったりと座席に座った。
スマホがぽこぽこ鳴り始める。案の定ビビからで、「ごめんなさい」とか「でも本気なの」とか。
良心が咎めたものの、心を鬼にしてローは彼女をブロックした。正直もう未知の生物みたいで文面を読む気力もない。
ぽこん、とさらにスマホが鳴った。
『大丈夫ですか?』
ペンギンからだった。答えようがなく、ローは事務的に返信した。
『会費は建て替えておいてくれ。今度会った時に払う。シャチに悪かったって伝えてくれ』
ペンギンも返信に困ったのか、『了解』のスタンプだけが送られてきた。無駄に可愛い皇帝ペンギンのスタンプを悪友は愛用している。イメージのギャップを何に悪用する気なのだろう。
(……は喜びそうだな)
まるで菓子で園児を釣る不審者のごとき手口だ。罪のないスタンプに殺意を覚えると同時に、ローはと約束していたことを思い出した。