第2章 花客
「 お、俺。初めて茗さんの音を聞いた時、脳が揺さぶられるような、ずっと聞いていたのに、変に鬼の音がするから、嵌りそうになる自分が怖くて、あ、でも、今は!血鬼術って分かったから、大丈夫ですけど…。 」
「 もしかして、伊之助も何か感じたんじゃないか? 」
「 あ?俺は、別に。何か、こっちに引っ張られるような、面白そうなもんがあるような気がしただけで。ま、面白いどころか酷い目に遭ったけ 」
「 それは私の台詞です! 」
頭を殴られたような衝撃。
結局、何処にいても迷惑を掛けてしまう。況してやこんな人の癒される筈の場所で。
一度浮上した気持ちは、またもや、視線と共に落ちてゆく。
落ちた先で、覗き込む顔。小さな手を伸ばして、頭を撫でられる。
「 うー?うーうー、 」
竹筒を咥えた少女の姿。まるで、大丈夫だよ、と言ってくれているような気がして、その場にへたりと座り込んでしまう。こんな知らない幼子に慰められて、安堵を覚えてしまうなんて、心の弱い証ではないか。
そんな場違いな自責の念に駆られ、反応が遅れてしまったが、
「 お、に? 」
「 ああ!禰豆子!部屋に居ないと駄目だろう? 」
大丈夫です!禰豆子は人を喰らいませんから!
今、何と。いや、人を食べない鬼。鬼を連れた隊士。聞いたことがある。縁がないと思って忙殺される日々に淘汰されてしまっていたけれど、まさか、この少年が、その隊士で、今、私が安堵を覚えた相手が、鬼。
何が大丈夫なのだろうか。危害を加えないと言う意味でだろうか。だとすれば、私の方が余程、鬼だ。
悲観に、卑屈に。自責に、自問。
ぐるぐる、と巡る思考回路は、留まることを知らず、人前だと言うのに、ああ、ほら、また迷惑を掛けてしまっている。
「 た、炭治郎!ばか! 」
「 お、俺、何かまずいことでも言ってしまったのか? 」
「 ゆっくりと、呼吸をしなさい。そう、大丈夫だ。何も気にする事はない。 」
優しい声が頭に入り込んでくる。
温かく大きな手が頭を撫でてくれる。
いつのまにか、上手く出来ていなかった呼吸に気付いて、ゆっくりと息を吐き出して、そして、吸い込む。新鮮な空気に思考が徐々に解れて行くのを感じて、頭を上げれば、
「 炎柱、さま。 」