第2章 花客
ぼんやりと聞こえる恋柱様の熱情に耳を傾けながら、何処か夢心地、幸せの御裾分けをしていただいているような心持ちで桜餅を頬張る。
「 でも、大変よね。その、…殿方から好意を寄せられるなんて。さっきの不死川さん、吃驚しちゃった。 」
「 ……、やっぱり、あれは、その、そういう感じなんでしょうか? 」
「 うん? 」
「 失礼は承知なんですれけど、そういう機会もなかったもので。好意を抱かれる、と言われてもいまいちよく分からなくて…、 」
「 まあ、!とっても初々しいのね!可愛いわ~!茗ちゃんは自然体で良いんじゃないかしら。だって、きゅんっとする気持ちは性別に関係しないものだから、な、なんて、私もそう言うものに慣れている訳じゃないけど…。うう、大した事、言えなくてごめんね?でも、拒絶するときはちゃんとしないと、危ないから。 」
「 いえ、そんな!有難う御座います。じゃあ、あの、私は特に何かしなくても良いんでしょうか。こう、…申し訳なくて。もう、会う事もないとは思いますけれど、 」
「 応えたいと思うなら、応えれば良いし、そうじゃないならしなくても良いと思うけど、…聞いているだけできゅんきゅんしちゃう。ふふ。でも、好きな殿方には自然とそうなっちゃうものよ。だから、今は何も気にせず、解けるのを待ちましょう? 」
優しい恋柱様の言葉に、漠然としていた気持ちが晴れてゆくのを感じる。
知らず知らずのうちに、不安だとか罪悪感だとか、未知なものに対する恐怖心に呑まれてしまっていたらしい。
溢れそうになる涙をお茶と一緒に飲み込み、有難う御座います、と再度軽く頭を下げて謝辞を。