第4章 指南
信長が待つ天守閣へ向かうあいだ、光秀は茜のことを考えていた。
緊張で顔を怖ばらせ、緊張しながら自分を待っていた茜。
結い上げた髪で、無防備にうなじを晒す姿は痛々しかった。
(まぁ、平和な時代からやってきた茜にしてみれば、突然、乱世を生き抜くための指南をすると言われれば、動揺するのも仕方ない。)
茜には逃亡防止など言ったが、事実は全く逆だった。
しかし、光秀にそれを明かす予定は特になかった。
表向き監視せずとも、茜に逃走する度量などないのは一目瞭然だ。
(茜は無防備が過ぎる。舞もそうだが、今のままではこの乱世を生き抜くのは難しいだろう。)
天下人である織田信長に気に入られ、安土城に迎えられるということは、今後、相応の災難が降りかかるということでもある。