第4章 指南
「茜、やり遂げられたら明日は一日休みをやる。せいぜい頑張れ。馬に振り落とされたその時は、そこにいる九兵衛に慰めてもらえ」
(そんな……!)
こちらも見ずに手をひらりと振り、光秀さんは行ってしまった。
(少しでも優しいと思った、私が馬鹿だった…)
「茜様、私でよければ乗馬の訓練にお付き合いいたしますよ」
「本当ですか? ありがとうございます!」
「お気になさらず。さっきのお言葉は、そういう意味でしょうから」
「え……?」
「なんでもありません。では、さっそく訓練の続きを。少しでも速度を上げられるようになってください。今の歩調では厩舎に戻る前に日が暮れます」
「は、はい」
お礼する私に笑顔で厳しいことをサラッと言う九兵衛さん。
(さすがは光秀さんの家臣。口調は優しいけど手厳しい……。)
未来でもこの時代にも取り柄もなかった自分でも、新しくできるようになったことがある–––
少しだけ、馬に乗れた自分が誇らし気に思えた
…………