第4章 指南
「光秀さん、見てください! 歩いてます! ちゃんと乗れましたよ!」
「そうだな」
興奮気味に馬上から光秀さんに向かって手を振ると、光秀さんが笑みをこぼすのを見て、ふと我に返る。
(あ……、なんだか…今、凄く恥ずかしいかも。子どもっぽいと思われたかな)
「……すみません。柄にもなく、はしゃいでしまいました…」
「ん……?」
「光秀さんにしてみれば、馬に乗ってちょっと歩くくらい、簡単ですよね」
「他の誰がどうでも、お前は、お前にできなかったことがひとつ、できるようになったんだろう? なら、素直に喜べ」
「でも、まだ走ったりはできないですし……」
「できないことの数はお前の伸びしろだ。気に病む暇があったら鍛錬すればいいだけのことだろう」
「伸び…しろ…ですか」
(こんな風に言ってくれる人なんだ…)
光秀さんの指南は怖くて厳しい。でも……
座学は難しくてついていくのがやっとだけど、分からない箇所はわかるまで何度も教えてくれる。
護身術や武器の扱い、火縄銃の撃ち方を習う時も、怪我をするような危険な事態は一度も起きていない。
現に今だってそうだ。