第4章 指南
「さて、馬に謝れ、茜。振り落としたくなるほど、お前は嫌がることをしたんだからな」
(そういえば……)
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「まあ、そう力むな、馬が怯える。自分が行きたい方向をはっきり示せば自然と応えてくれる。しがみついたり、大声をあげたりすることもやめておけ。馬の嫌がることをしてはいけない」
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ブルル……と息を荒くしている馬に向き直る。
(見ず知らずの私に乗られて、この子も怯えてたんだ)
「ごめんね。怖かったね……」
いたわりを込め、馬の背をそっと撫でてみる。
次第に呼吸は落ち着いていき、馬は濡れた黒目で、しっかりと私を見つめ返してくれた。
「それでいい、よくできたな」
(正直、馬に乗るのはやっぱり怖いけど……この子と仲違いしたまま終わるのは嫌だな)
「光秀さん。私、もう一度、この子に乗せてもらってもいいですか」
「好きにしろ」
介助してもらい、再び馬の背に乗る。
大ピンチを味わって感覚が麻痺したのか、高さにひるむことはもうなかった。
「改めてよろしくね。よし、行こう」
軽くお腹を蹴って合図すると、馬はゆっくりと歩き出した。