第4章 指南
慌てて手綱を掴み、足を締める。
あっという間に城門が近づいて……
(どうしよう、どうしよう、どうしよう……! このままじゃ城下町に暴れ込んじゃう)
自分が怪我をするよりも、誰かを傷つけることの方が怖い。
風が頬を叩き、眼前の風景が左右に飛びすさる。
「お願い、止まって……! 言うことを聞いて!」
恐怖に駆られてたてがみにしがみつくと、馬は前脚を蹴り上げた。
(っ、落ちる……! )
死にたいと思っていた私の願いは、ここで叶えられるのか、と
覚悟を決めた私の身体は、石畳に打ち付けられ–––
は、しなかった。
(あれ……?)
「お前は本当に、俺の言うことを聞かないな。困った子だ」
力強い両腕が、私を抱きとめてくれている。
「それでこそ、いじめがいがある」
(光秀さん……!?)
瞬きを繰り返して、見慣れた意地悪な笑顔が幻じゃないことを確かめる。
肩越しに、光秀さんが乗ってきたらしい白銀のたてがみを持つ馬が見えた。
「追いかけてきてたんですか……?」
「お前が馬を困らせていないか心配だったんでな」
光秀さんはそう言いながら、私をふわりと地面に降ろした。