第4章 指南
「せめて休憩を挟んでもらえませんか? 詰め込んだ知識がそろそろ耳からこぼれそうです……」
「そういうことなら」
(!?)
突然、両手で耳元を覆われ、周囲の音が遠のく。
(っ、光秀、さん……?)
ひんやりした親指の先が、そっと私の目元をなぞった。
光秀さんの仕草に、思わず昨日のことが思い出されて、身体の中が熱くなる。
「知識がこぼれないように俺が耳をふさいでおいてやろう。安心して休憩するといい」
「こんなふうにされて気が休まるわけないでしょう……っ」
「おっと」
固い胸板を押して、部屋の隅まで急いで逃げる。
(……びっくりした……。昨日のことといい、光秀さんって、簡単にこんなことする人なの?)
昨日は暗くて分からなかったけど、間近に顔を寄せられて気づいた。この人が笑うと、長いまつ毛が頬に影を作る。
思わず見惚れたなんて絶対に悟られちゃいけない。