第1章 プロローグ
「……三成? 貴様、なぜここにいる。秀吉はどうした」
「秀吉様のご命令で参りました。秀吉様ご自身も今こちらへ向かわれています」
火の手を上げる本能寺を横目に、三成と呼ばれた男性が眉をひそめた。
「信長様のお命が狙われているとの情報が入ったのですが…本当だったようですね。敵は少数だったらしく、配下の者に探させましたがすでに逃げたあとでした。こちらの女性は? ご一緒に本能寺から出ていらっしゃるのが見えましたが…」
「茜、俺の配下の者に挨拶しろ」
「はぁ…?は、初めまして?」
「私は石田三成と申します。信長様の右腕である秀吉様の元で、側近を務めている者です」
(優しそうな人…。『石田三成』って名前も有名だよね。すごく綺麗な顔してる。)
「何者かは俺も知らんが、この女が刺客に気付き、寝ていた俺を起こして外へ連れ出したのだ」
「そうでしたか…! 御館様の命を救っていただき、ありがとうございました」
「い、いえ…」
「ですが、茜様はなぜ本能寺に? その服装からして…もしや舞様と同じ時代の方ですか?」
(さっきから『舞』って、名前が出てくるけど…
もしかして、私以外にタイムスリップした人がいるってこと?)
「『舞さん』と同じかどうかはわかりませんが、私はおそらく五百年後くらいの時代から来た者人間だとおもいます。」
「ますます面白い。舞のほかに先の時代の人間が現れるとは。」
(やっぱり、私の他にもいるんだ。)
織田信長と名乗る、その人の言葉に私は自分以外の未来から来た人間がいることを確信した。