第3章 龍虎退治
「ど、どうしたんですか?」
幸い部屋の中は薄暗い。
障子の隙間から覗く月明かりなら、泣いた顔も分からないはず。
(泣いてたのバレてないよね…)
声は震えてないだろうか、目は赤くないだろうか
そんなことを思いながら、光秀さんを見上げると…
ほの暗い部屋の中でも、僅かな月の光に照らされた光秀さんと目が合った。
ーーー綺麗な人。
泣いてたことがバレるのでは、とか戦々恐々としていたのに、この瞬間、頭の中は全く関係ないことを考えていた。
「眠れたかどうか様子を見にきたんだが……、その様子ではやはり眠れぬようだな」
「……は、は…い……」
「家康から眠りにつける薬をもらってきた。」
「…え……?」
光秀さんの手元を見ると、茶碗を持っている。
光秀さんは布団の横に膝を付くと、茶碗と小さな紙包みを私に差し出した。
(私が眠れない…と、思ってもらってきてくれたのかな?)
想定外のことに、差し出された紙包みと茶碗をぽかんと見つめる。
「どうした?自分で飲めないのなら、俺が飲ませてやろうか?口移しでな」
「…だ、だだだ、大丈夫です…っ…」
その言葉を聞いて、私は慌てて薬を受け取ると茶碗の水で一気に流し込んだ。