第3章 龍虎退治
「ようやくお目覚めか、寝坊助」
「っ、光秀さん……」
枕元から低く潤った声がして、慌てて布団をはねのける。
周りを見渡しても、今、目の前にいたはずの恋人の姿は…、ない。
「慌てるな。まずは白湯でも飲め」
「は、はい……」
差し出された茶碗を言われるがまま傾けるうちに、記憶がよみがえってきた。
(そうだ、私、戦場で倒れたんだ……。じゃあ…、さっきのは…、夢…。)
例え夢の中でも、一瞬だけ逢えた恋人に心臓が落ち着かない。
はぁ……、とため息を一つつくと、呼吸を整えて、気を落ち着かせる。
「戦は……?」
「引き分けだ。敵は存分に力を見せつけ、こちらも同じことをした。信長様や秀吉たちは皆、無事だ」
「……よかった」
夢から一気に現実に引き戻されて、目の前に広がった凄惨な光景を思い出した。
(本当によかった、けど……無事じゃなかった人も、いる)