第14章 化け狐と今宵かぎりの想い
「おや、今宵の妻は、やけに素直だな」
「……あなたといると、あなたを嫌う理由が減っていくんです」
「ん……?」
「あなたが裏切り者でも、悪人でも、それでもいいと……思ってしまいたくなるんです」
「…………」
(ずっとこのまま、夜をふたりで走っていけたらいいのに)
「……言っておくが、安土に戻れば夫婦の真似事も終わりだ」
「……わかっています」
(分かってる……。分かってるから、今だけは貴方に寄り添いたい)
「だから……、今のうちに、たっぷりお前を可愛がっておくとするか」
(ぁ……っ)
長い指先が、私の耳をピン、と弾く。
顔を上げると、優しいとしか言えない眼差しがそこにあった。