第3章 龍虎退治
「謙信たちの邪魔をする気はないよ。俺たちは、行き場をなくして彼らの城に身を寄せているだけ。今回はお前たちがどうしてもと言うから後方支援を願い出たけど、勘違いしてはいけない。これは俺たちの戦じゃない。……今川家はもう、終わったんだよ」
諦めたような、寂しげな顔を浮かべる義元に家臣たちは、呆れたようにその場を去った。
義元を残して野原へ出ると、家臣たちは不満をいっそうあらわにした。
「嘆かわしい! あのように気弱な者が当主だから、今川家は信長に負けたのだ。お家再興の手立てはないものか……!」
「……面白い話をしておいでですね」
「!? 何奴?」
突如として現れた男は、簡素ながらも見る者が見れば恐ろしく質が良いとわかる着物をまとっていた。
「とある高貴な方の遣いにございます。皆様は名高い今川家の方々とお見受けいたしました。落ち延びたとの噂を聞き、お探ししておりました」
「何……?」
「–––貴殿らに耳寄りなお話が」
怪しげな使者は、不気味な笑みを浮かべると今川の家臣に耳打ちをした
…………