第3章 龍虎退治
光秀さんの肩越しに映るのは、もつれるようにぶつかり合う馬と馬、人と人、燃える夕焼け–––
刀が金切り声を上げ、銃口がうなり、あちこちで真紅の飛沫が上がる。
轟音に包まれながら、次々と倒れて行く兵士たち、私はただ黙って…簡単に散ってゆく命に何もできずに棒立ちになっていた。
(これが…戦…ということ……?)
光秀さんは微動だにせず、目を細めて戦況を見守っている。
「……見つけた、あいつか」
(見つけたって誰を……っ?)
「狙うは明智光秀の首! 怯むな、進め!」
「おう!」
(あ……っ!)
隊の将らしき人が軍配を振るのが見え、それを合図に敵兵がこちらに向かって一斉に矢をつがえる。
その時、光秀さんが動いた。
矢の軌道を自分の身体でさえぎるように私を背に隠し、一歩踏み込む。
ためらいもなく、ただひとつの方角へ銃を構えた。
「茜、耳はふさいでもいい。ただし目は開けておけ」
「目を、ですか……っ?」
「これが、無垢なお前が生き抜いていかなければならない現実と、–––お前が望んでいる、現実だ」