第3章 龍虎退治
「正面に手勢を割き相手の注意を引きつけ、少数精鋭で背後を取り、挟撃する……。有能な兵がいてこそ為せる打ち手だ。軍神は人材に恵まれているらしいな」
(この人、全然動じてない! むしろ……)
笑みすら浮かべ、光秀さんが家臣たちを振り返る。
「さて皆の者、ひと仕事といこうか」
はっ!」
光秀さんの家臣たちが声を一つに叫ぶ
「光秀さん、私はどうすれば……っ!」
「何もするな」
「え……」
「お前はただ、俺の背中で震えていればいい。いいな?」
(でも、私なんかが居たら邪魔になるだけじゃ……)
恐怖に声が出ないでけど、絞り出すように光秀さんに声を掛ける
「何かあったら……、私のことは気にしないで……」
私の言葉に光秀さんの目が一瞬見開かれて、私を見つめるとーーー
私の唇に人差し指をそっと立てて、私の言葉を遮った。
「良い子だ」
驚いて黙った私の頭をひと撫ですると、黒光りする銃を取る。
「–––迎え討つぞ」
光秀の家臣たち「おう……!」
(うわ……っ)
飛び出していく兵たちが大地を揺るがす。
五分と経たずに、のどかな野原は戦場と化した。