第3章 龍虎退治
「と、思うだろう?」
「不穏な切り返しはやめてください……!」
「–––茜、織田軍を率いる信長様の右腕は、誰だと思う?」
(ん……? 急に話が飛んだな)
「右腕……秀吉さんでしょうか? いつも信長様のおそばに控えてますよね」
「ご明察。では、信長様の左腕は?」
(軍議の時、秀吉さんと対になって座ってたのは……)
「っ……光秀さん?」
「またもやご明察。これがどういうことかわかるか?」
「わ、わかりかけてきましたけど、もしかして……」
「舞と違ってお前なら分かるだろう?」
(信長様の右腕である秀吉さんは、本陣で信長様を守ってる。最重要ポジションだ。その対である光秀さんが任されたのがこの場所。ということは……っ)
ドク、ドク、と心臓の音が大きくなっていく。
それを、遠くから響いてきた地鳴りがかき消した。
「っ、光秀さん、この音……!」
「しー……」
光秀さんが人さし指を立てるのを見て、言葉の続きを飲み込む。
地鳴りは次第に大きくなり、視界の隅で土埃が立った。
馬を操る兵たち、そして–––青く染め抜かれた旗指し物が、怒涛の勢いで近づいてくる。
光秀さんの家臣の声が響き渡る
「敵襲、敵襲–––!」
(やっぱり! 殿は重要ポジションのひとつだったんだ……!)