第12章 その感情は
「強い子だ。–––よしよし」
光秀さんが囁きながら、私の頭を何度も撫でる。
「それで?その手首の傷はどうした?」
「え……?」
光秀さんの言葉に手首を見ると、あの時、男に強く掴まれたせいで手首が赤くなっていた。
「……まだ話していないことがあるだろう?」
「……あ…」
視線を落とし、赤くなった手首を隠そうと寝間着の袖を引っ張る。
恐ろしい目にはあったけど、光秀さんの護身術で逃げられたし、結果的に何もされなかった。
だから、大丈夫。
そう自分に言い聞かせた。
言わないで済むなら、話したくない。
(これ以上、光秀さんに余計な心配をかけたくない……)