第12章 その感情は
「これは……どうした?と聞いている」
怒りを押し殺したような声に思わず見上げると、光秀さんの瞳と目が合った。
赤くなった手首を光秀さんの冷んやりとした手が添えられる。
怒りを含んだ声色とは反対に、その瞳は優しくて……私の身を案じてくれている
そんな光秀さんに何も話さないのは……
意を決して言葉にすることに覚悟すると、ぎゅっと目を閉じて再び俯き口を開いた。
「……お…襲われ……て…、で、でも、習った護身術で逃げ出しました…っ……!だから、何もされてません!」
口にするのと同時にグイッと光秀さんの胸の中に閉じ込められる
「……馬鹿娘。こんなに…、震えて」
(え……?)