第12章 その感情は
「おい!娘!どこへ行く?!」
さっき聞いた同じ台詞に、ハッと振り返ると私をここに連れて来た武士がいた
「義昭様の相手はどうしたのだ?!」
「あ、あなたに関係ないでしょう?!そもそも、茶の湯の席だと言われたから来たのに!!」
馬鹿にされたあげく娼婦扱いされたのは、そもそもこのひとが私を騙したせいだ。
この憤りを連れて来た武士にぶつけると、男はニヤリと不適な笑みを浮かべた。
「そうか。義昭様のお眼鏡には敵わなかったのか。それは、さぞかし残念だったろう……」
男がニヤニヤと笑いながら近づいてくるのを、後退りしながら距離をとる。