第11章 嘲る者
とっさに投げつけた『嫌い』という言葉の強さが、今さら胸に迫り、後ろめたさに襲われた。
(『嫌い』なんて、言い過ぎだったよね。私は……あの人が、嫌いになれなくて困ってるのに……。)
あの人の意地悪を、もっと上手に受け流せるようになれたら、もっと普通にできるのかな。
(……とりあえず、光秀さんが帰ってきたら、笑顔で『お帰り』を言おう)
そう心に決め、宿への帰路をたどっていると–––
「おい、そこの娘! 止まれ!」
背後から掛けられた、大きな声に驚いて振り返ると
武士らしき男性が、風を切って歩み寄ってくる。