第10章 偽りの夫婦
(旅の間は別々の部屋で寝てたけど……)
ズクンッ……
あの時、噛まれた肩口が疼いて、身体が熱を帯びるのを感じた
「飛び入りの旅芸人相手に、かなりの厚遇じゃないか。茜、いい一座に入ったな」
「問題はそこじゃありません……」
「そうヤキモキするな。布団はお前に譲ってやる」
「え、それじゃあ…光秀さんは……?」
「遠慮はいらない。俺は、お前を布団代わりにして暖を取るからな」
「結局、一緒に寝るってことじゃないですか……!」
「夫婦らしくなってきただろう」
「ふたりきりの時まで偽装夫婦でいる必要はないでしょう……。もういいです。余ってる部屋を貸してもらえないか、それがダメならもう一組布団用意できないか、宿のご主人に交渉します」