第10章 偽りの夫婦

鼓動が騒いでいるのを悟られないよう、できる限りキッパリと言い切ると–––



「–––やれやれ、またフラれたか」

「……！」


返された笑顔に、胸を衝かれた。


(……っ、なんで、そんなふうに笑うの？)



光秀さんの目元には、一抹の切なさが浮かんでいるように見える。
意地悪されてるのは私なのに、まるで自分が光秀さんを虐めてるような気がして胸が締め付けられた


(そんな顔を向けるのも、夫婦のフリの延長なの……？)


分からない感情と一緒に熱いかたまりが、喉元へとせり上がってくる。