第10章 偽りの夫婦
「気持ちいいな」
「え……っ?」
「お前の髪に触れるのは、なかなかに楽しい」
(は……、びっくりした…!考えていたことがバレたのかと思った……。にしても『楽しい』って……。人の気も知らないで)
鏡に映る光秀さんはご機嫌で、器用に私の髪を結い上げていく。
光秀さんの指は意地悪なのに、心地よくて気まで許してしまいそうになる
きっと、人のどこをどうすればどう感じるか、指先で熟知しているんだろう。
光秀さんはただ、髪を結ってるだけなのに、余計な想像して顔が赤らんでくる
俯きそうになる私の顎をそっと持ち上げると、光秀さんは仕上げに朱色の紅を目元と唇に乗せた。