第9章 偽りの許嫁
(これでもう……)
電話に残された、写真を見ることはできない。
少し前の私だったら、耐えられなかったかもしれない。
だけど……
今の私は、不思議なほど冷静にそのことを受け止めている。
それは……きっと、彼が……秀人が……ちゃんと私の中で笑っているからだ。
まぶたの裏に浮かぶ彼の笑顔。
心の中で私は、彼に笑いかけた。
「そろそろ行くぞ。」
襖の向こうから光秀さんに呼ばれ、私は『お願いね』と、風呂敷を舞ちゃんに託し部屋を出た
残された舞は渡された風呂敷を抱くと、何か思うように、茜の後ろ姿を見つめたーーーーーー