第9章 偽りの許嫁
顔まで赤くなりそうになるのを必死に堪え平静さを装い、隠してあったバッグを取り出す
「そ、それでね、舞ちゃんにお願いがあるんだけど……。これ……私がいない間、預かってもらえるかな。五百年後の物だから、見つかると大事になると思って」
「うん。大丈夫!預かるよ。」
(あ……、そういえば……)
舞ちゃんにバッグを手渡す前に、中からスマホを取り出す。
(最後に電源を入れたのは、光秀さんと遠乗りに行った日だったっけ……)
遠乗りから帰ってから見た、写真の秀人はどれも笑顔で。
その笑顔の写真をあんなに穏やかに見れたのは、秀人を亡くしてから初めてだった。