第9章 偽りの許嫁
「……舞ちゃん。ちょっと、色々あって……私、迷ってるんだ。」
「迷ってる?」
「き、急すぎて光秀さんのことは、まだ…好きかどうかも……わからないっていうか……」
「確かに……いきなりプロポーズだなんて、誰だって戸惑っちゃうよね」
「そ、そうなの……。だから、考える時間をもらってるの」
「それじゃあ、光秀さんと長旅で、もしかしたら何か進展あるかもしれないね」
『うんうん』、と頷く舞ちゃんは、
何か期待してるように笑顔を浮かべている
舞ちゃんの期待が何なのか
脅されたあの日、私の喉元から鎖骨へなぞられた指先の感触が脳裏をよぎる
冷たい指先の感触が思い出されて、身体の芯に熱が帯びてゆく