第9章 偽りの許嫁
「舞に頼みごと?」
一瞬、表情を曇らせる光秀さん。
怪訝な顔をした光秀さんと私の間に、恋仲同士とは言い難い微妙な空気が流れる。
「……何も言いませんから。お願いします……」
光秀さんに疑いの眼差しを、その瞳を私は逸らすことなく見返す。
私と光秀さんの不自然な雰囲気。
「茜ちゃん?」
舞ちゃんの言葉に、光秀さんの表情が緩まり、私たちの視線は解けた。
舞ちゃんが私たちの雰囲気に疑問を抱く前に、光秀さんが「やれやれ」と、口を開く。
「……仕方がない。俺はお前と片時も離れたくはないんだがな。可愛い茜のお願いだ。少し席を外そう」
「…………!」
そう言うと、私の耳元に唇を寄せる