第9章 偽りの許嫁
「気持ちは分かりますけど……。女同士でしかできない会話もあるんですよ。こんなべったりじゃ、茜ちゃんだって息が詰まっちゃうと思うんですけど?」
「……光秀さん、私からもお願いします。舞ちゃんにお願いしたいこともあるし……。」
これから向かう国は、現代でいう兵庫県と岡山県の境目だ。
交通手段が馬しかないこの時代だと、到着するのにどれくらい掛かるのか私には見当もつかない。
長い旅になるのなら、その間、舞ちゃんには私の荷物を預かってもらおうと思っていた。
信長様や武将の皆が私の素性を分かっているとしても、五百年後の荷物が万が一、他の家臣に見つかれば大事になりかねない。