第2章 Kiss her hand
前に、舞ちゃんに連れられて城下町へきた時に、舞ちゃんの友達だという佐助くんに偶然会った。
佐助くんは、舞ちゃんと一緒にこの時代にタイムスリップして来た人だと、こっそり紹介された。
義元さんはその時、佐助くんと一緒にいた人たちの一人だ。
「こんなところで再会するなんて、奇遇だね」
「あなたも安土にお住まいだったんですね」
「いや、俺はよそ者。物見遊山のついでに、伝令の仕事で来たんだ」
(物見遊山のついでに仕事?)
「逆じゃなくて、ですか?」
「逆じゃなくて、だよ。美しいものを見つけることは、仕事よりも何よりも大切な、俺の生きがいなんだ」
(生きがい……。)
初めて会った時も思ったけど…改めて見ると、たたずまいからして気品に溢れている人だ。
一挙手一投足が洗練されていて、いつのまにか道行く女性の視線を独り占めしている。
「君もこの反物が気に入ったの?」
「あ…、私、というより舞ちゃんが好きそうだな、と思って。染めが繊細で、鮮やかで……とても綺麗ですよね」
「気が合うね。俺も、そう思っていたところ」
花びらが散る瞬間のような儚い笑みに、私は釘付けになった
(この人の笑顔…。……少し、似てる…)
「どうしたの?俺の顔に何かついてる?」
「あっ……、ご、ごめんなさい。ちょっと、知り合いに似て……」
自分が見惚れていたことに気づいた私は、気恥ずかしさから慌てて俯いた