第2章 Kiss her hand
みんな、優しくて面白いんだけど…
(……光秀さんだけは、ちょっと苦手なんだよね)
あの人を見かけると、条件反射でつい逃げてしまう。
(考えを読まれるようなあの感じを味わうのは、できる限り遠慮したい……)
「茜様、どうかなさいましたか?」
「あ……ううん、なんでもない。それじゃ行ってきます!」
家康と三成くんに手を振りながら、城門を出る私。
(秀吉さんと蘭丸くんにも何度か案内してもらったから、出歩くのにも慣れてきたな)
覚えたての道をたどり、頼まれていた物を無事に調達すると、私は少しずつだけ城下を散策することにした。
沢山の人で賑わう城下町、行き交う人々は皆、生き生きしている。
(戦の絶えない乱世で、みんな生きることに一生懸命なんだ)
活気あふれる眩しいまでの姿が、自分とは対照的に感じられて、弱い自分に情けないような気分になった
ふと、一軒の店に目をやると、軒先に綺麗な反物がズラリと並んでいる。
(わぁ、いい色……。これ…、舞ちゃん好きそう)
手を伸ばした時、布地の代わりに陶器のようになめらかな指先に触れた。
「あ、ごめん……」
「………す…、すみませんっ…」
触れた指先に慌てて、手を引き、頭を下げる
「あれ? 君は……」
「あなたは……」
(佐助くんたちと一緒にいた人……! たしか『義元』って呼ばれてたっけ)