第9章 偽りの許嫁
「構わない、言え」
「『茜様との噂の件』とのことです。他にもひとつ話しておきたいことがある、とも」
(あのふたりの耳にまで、こんな噂が……!)
「九兵衛、ご苦労だったな。では行くか、茜」
「私も、ですか……!?」
「当然だろう? 俺とお前のことを報告するんだからな」
「その言い方、ちょっとおかしくないですか……!」
「そう慌てるな。ふたりに祝福してもらえるよう、俺がきちんと話をつけるから」
(『きちんと』って何……!?)
困惑する九兵衛さんを尻目に、光秀さんは人の悪い笑みを浮かべ、片目をつむってみせる。
お団子が喉に詰まって、思い切りむせた。
…………