第9章 偽りの許嫁
…………
「…………」
「…………」
(気まずい……。帰りたい……)
信長様と秀吉さんの突き刺さるような視線が痛くて、二人の顔を見ることができない。
「お待たせいたしました、信長様。秀吉、笑顔のひとつでも見せたらどうだ?」
「黙れ、うるさい、にやつくな」
(秀吉さん、普段の優しさと笑顔が消え失せてる……)
「茜とお前が恋仲だという与太話が、俺と信長様の耳に入ったわけだが、今すぐどういうことか説明しろ。万が一にも、茜にひどい真似をしたようなら……この場で足腰立たなくしてやる」
「ずいぶんと物騒だな」
「光秀。俺が見出した女に、貴様は手をつけたのか?」
信長様はどこか愉快そうに、秀吉さんは飛びかかりそうな顔で、光秀さんを見据えている。